ゲーム依存症の心理とその怖さ

「子どもがゲームばっかりして本当に困ってます」

こんな声をよく耳にするようになりました。
ゲーム自体は僕が小学生の頃からあり、もちろん当時の親御さんたちもこういう悩みはあったと思います。
ファミコンに夢中で何時間もテレビの前に居座っていた僕も、おそらく相当に親を困らせていたでしょう(汗)

しかし、昔と今では大きく違いがあります。
まず今のゲームの手軽さ。
昔は一つのテレビが必要で、本体、カセット、アダプタ接続とゲームを始めるまでに面倒くさい作業がありました。
親の目をかいくぐってしたり、何時間までと約束したり、勉強する対価としてカセットを買ってもらったり、そこまでの自由度はなかったように思います。

しかしながら今のゲームは格段に手軽です。
スマホ、タブレット、Switchのように携帯型なので、いつでも、どこでも簡単に始められます。ダウンロードのようにソフトがなくても始められるゲームも多くあります。

そして今はコロナ禍という状況が更に子どもをゲームの世界にハマらせています。
外に遊びにいけない。友達同士で遊べない。そうなると必然的に家の中にいることが増えます。
子どもは、楽しみたいという欲求が特に強いので、退屈をしのげるゲームに手を出すのはこれも必然なのかなと思います。
そして今のゲームの最大の特徴は、オンラインで人同士が繋がれる点です。
チャットができたり、チームで一緒に戦ったり、友達同士でゲーム内のランキングを競ったり、遠く離れていても誰かと繋がってる感覚は、子どもを虜にする魅力としては十分過ぎるくらいあるでしょう。

親としては子どもにゲームを制限させるのは、昔よりはるかに難しいことがわかって頂けると思います。

ちょっとここで視点を変えて、親は「なぜそんなにゲームをさせたくないのか?」という点です。

大きな理由は「勉強しなくなること」でしょう。
「いつまでゲームしてるの!早く夏休みの宿題やりなさい!」という親子のやりとりは日本中で行われているはずです。

しかし、親が心配する以上にもっと恐ろしいことが背後に潜んでいます。
それが「ゲーム障害です」

いわゆる依存症のレベルです。

ゲーム障害とは、ゲームに熱中し、利用時間などを自分でコントロールできなくなり、日常生活に支障が出る病気のことを言います。
WHO(世界保健機関)では新たな病気として2019年5月に国際疾病分類に加えました。

つまり世界基準で立派な病気と認められたわけです。
以前に中国や韓国で24時間以上ぶっ通しでゲームをし続け、ネットカフェで亡くなってしまったという最悪なケースもありました。

そこまででなくとも、何時間もずっと部屋でゲームし続ける我が子に対し、これは依存症の病気なのでは?と心配される親御さんもみえると思います。

下記はゲーム依存の判断基準として参考になると思います。
5つ以上当てはまるとその特性が強く疑われます。

① ゲームをしていないとき、頻繁にゲームのことを考える。
② ゲームができないときに、頻繁にソワソワしたり、イライラしたりする。
③ 過去1年間で、より頻繁に長い時間ゲームをしなければと思ったことがある。
④ 過去1年間で、ゲームの時間を減らそうとしたがうまくいかなかったことがある。
⑤ 過去1年間で、友人に会ったり、趣味や遊びをするよりもゲームを選んだことがある。
⑥ 睡眠不足や仕事・家族への影響など、問題が生じているのに、長時間ゲームをしたことがある。
⑦ 自分がどれくらいゲームしたのかを、家族や友人などに隠したり、嘘をついたことがある。
⑧ 無力感や罪の意識、不安感を晴らすためにゲームをしたことがある。
⑨ ゲームのために人間関係を危うくしたり、失ったことがある。
⑩ 過去1年間で、ゲームのために勉強ができなかったことがある。(成績が落ちた、集中できない)
原典:Kiraiy O et al.Addictive Behaviors.2017/翻訳:久里浜医療センター

このようにゲームに心が支配され、家族そのものの交流が絶たれてくるとより一層に手を打たないと、完全に引きこもりといった孤立状態になりかねません。
しかも、ゲーム障害の怖さは、理性を司る前頭葉の働きを弱め、いわゆるキレやすい子になってしまうリスクが高まることです。

では、どうしたらいいのか?
ゲームを取り上げたらいいのか?

その前にゲームをすれば、10人が10人依存症になるわけではありません。1日1時間までと決めてゲームをほどほどに楽しむ子だっています。
なぜその中で依存症レベルになってしまう子がいるのか?

そこには心の原因があります。
依存症の原因として
・寂しさ
・つまらなさ
・自己肯定感の低さ
・回避傾向(目の前の問題から逃げる)
・愛着障害(幼少期に親から愛情を受けられなかったことによる人間不信などの弊害)
などが挙げられます。

これはゲームに限らず、ギャンブル、買い物、アルコール依存にも当てはまる原因です。

上に挙げたものが、よりその子の心の渇望として表れ、ゲームがまさにその渇望、飢えを見事に満たしてくれる要素が満載なので、どっぷりとハマってしまうのです。

ゲームによって、つまらさなが解消でき、ゲーム内の友達との交流で寂しさが解消でき、ゲーム内で強くなること(課金の問題も含む)で自己肯定感が高まり、ゲームの世界にいることで日常の嫌なことが避けられ、ゲーム内で人から承認されることで愛着障害も緩和される。

こうしてみると、依存状態になるのも無理もないかもしれません。
先ほど挙げた「どうしたらいいのか?」の問いに、ゲームを取り上げるなんていう答えが全く無意味なことは理解できると思います。

打開策としては、その子に原因となるものをゲーム以外で解消してあげることです。
ゲーム依存になる子の家庭は、親子のコミュニケーションが少ない傾向があります。
寂しさというのは、自分の存在をみてほしい、わかってほしい、関心を向けてほしいが叶わないこととも言えます。
なので、日常から子どもの行動や言動に関心を向け、たわいもない内容でも、「うん、うん、それでそれで?」と子どもの声に耳を傾けてみるのもよいかと思います。
自己肯定感が低いのであれば、小さいことでも子どものアクションに対し、ストロークをかけてあげる。「すごいね!」「おおぉ~」など褒めて子どもが嬉しい気持ちになってくれたら十分です。

あとは焦らないことです。
無理やりゲームを引き離そうとする親の行為は子どもは敏感に察知します。
本人にとってはゲームの世界は自分に足りない全てを満たしてくれる存在かもしれません。
それを否定せず、時には一緒にゲームをし、その中で外で遊ぶなど自然とシフトチェンジしていくこと肝要だと思います。

難しいかもしれませんが、一歩ずつです。
自分の力では何ともならないのであれば専門家を頼ってください。

僕も心理カウンセラーとして、不登校や依存症のケースも多く関わってきました。
もし必要でしたらメッセージなど頂けると幸いです。

長文となりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。

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