親が子に与える影響〜短編小説風〜

【二人の人生】

とある郊外の町

A君とB君は幼稚園の頃から友達でした

A君とB君は同じ小学校に入学しましたが

明暗が分かれます

A君は頭脳明晰
学校でもトップの成績でした

一方B君は勉強が大の苦手
学校の中でビリの成績でした

それでも二人は一緒に仲良く遊んでいました

学校のテストで

A君は100点を取ると
お母さんは「偉いわね」と上機嫌でした

B君は30点を取ると
お母さんは「大丈夫」と頭を撫でました

また次のテストで

A君は90点を取ると
お母さんは「何で100点じゃないの!」と叱責しました

B君は40点を取ると
お母さんは「頑張ったね」とまた頭を撫でてくれました

A君はB君に勉強を教えたりしていたのですが

ある日
A君のお母さんは我が子の成績が下がったのは
B君のせいだと考え

B君にこう言いました

「もう家の子と遊ばないでくれる!」
「私立の中学校受験するから勉強に集中させたいの」

B君は悲しそうな顔で「はい」と答えました

A君はお母さんからそのことを告げられ

反抗したかったのですが何も言えませんでした

A君のお父さんはそのことに無関心でした

B君のお父さんはその分子どもと遊ぶ時間を増やしました

そうして

お互い顔すら合わせなくなってしまいました

月日は流れ

A君は名門私立から有名国立大学へ進学しました

B君は工業高校から地元建設会社に就職しました

しかしA君に異変が訪れます

友達の作り方が分からず孤立してしまったのです

いつも教室では一人
人生の意味を見失い

大学にも行けなくなってしまいました

一方B君は必死に働いていました

人柄も良く

「僕はバカなんで、一生懸命やるしか能がないんです」
と笑いながら一途に仕事をしていました

先輩から可愛がられ後輩からも慕われ

周囲から徐々に評価されるようになり

ついには社長から
「新しい会社はお前に任せるからな」

と35歳にして経営者になりました

一方A君は
自宅に引きこもっていました

大学を中退し
働くことはおろか家からも出られなくなっていました

両親はそんな我が子を一切干渉しなくなり
食事のみを与えていました

そんな二人に運命の日が訪れます

B君はふとA君がどうしているのか気になり

家の近くまで足を運びました

A君は滅多に家を出ないのですが

その日は何か無性に外に出たくなり

玄関の扉を開け重い足を前に進めました

「あ」

A君のあまりの変わりように

一瞬人違いかと思いましたが

面影は残っていました

B君は思い切って
「久しぶり」と声をかけました

A君はバツが悪そうな顔を浮かべ

小さな声で「うん」
と答えました

お互い無言のまま
昔一緒に遊んだ公園に向かいました

B君はA君の様子から何かを察していました

錆びたブランコにお互い座り

A君は無表情のままです

そんな重い空気の中

B君はこう声をかけました

「今さぁ、会社で数字見れる人探してるんだ」

A君は何のこと?という顔で聞いてます

「僕さぁ、昔から頭悪いやん」
「一応社長になったんだけど、経理とかほんとわかんなくて」

A君は内心B君が社長になったことに驚いています

「だからさぁ、A君、うちの会社で働いてくれないかな?」

「小学校んときみたいに勉強教えてよ」

A君の無表情の顔から一筋の涙が流れました

「また一緒に遊ぼうよ」

A君は涙を止めることはできませんでした

「うん」
と一言だけ返し

B君は「よし、決まり!」

と公園を後にしました

帰り道A君は初めて笑顔を見せました

「顔が痛い」

長年笑ってなかったので
顔の筋肉がビックリしているようです

こうして二人はまた一緒になり

A君は持ち前の頭脳を活かし

B君の会社の業績もどんどん良くなっていきました

あの時あそこで出会わなければ

いや

出会うように神様が計らってくれたんだろう

小さい頃を思い出し

A君は「ありがとう」

B君も「こちらこそ」

と笑顔で

お互い空を見上げたのでした

〜fin〜

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